前聖ノ滝沢 〜 聖岳 (2007年9月16日)

    

 ■本邦最南端の3000m峰“聖岳”・・南アルプス南部の豊かな森から潔く3000mの峰に突き上げる“前聖ノ滝沢”は地形図を見ているだけでゾクッとくる地形だ。
  沢に興味がある人なら一度は挑戦を夢見るだろうと思われる、 国内でも険悪な沢、
「所の沢」 や、「倉沢」もやはり 南ア南部の沢で、聖沢から歩いて
  行ける範囲なのだ。この三つの沢は大きく言えば全て名渓・「赤石沢」の支谷になるわけで、その意味でも赤石沢とはスケールの大きな沢と言える。
  今回遡行する前聖ノ滝沢は日本登山大系には、巻頭の白黒写真の片側一面に「前聖ノ滝沢」として大きく掲載されていて、常々興味津々で眺めていた。
  しかし、解説されている資料を見ると遡行時間に10〜12時間・・!と明記されているが、遡行方法にもよるのだろうが、最近では軽装の本格派クライマー達が、
  その半分くらいの時間で駆け抜けているとの情報もある。 いったいどんな困難が待ち受けているのか。
  対岸の滝見台から見える急峻な地形と、連瀑帯は、さぞかし強烈な遡行を予想させるが、その上部・・聖岳山頂南面に広がる広大なカール地形にはとても
  慈悲深い何かを予感させる。 さて、間違いなく爽快で開放感溢れる沢詰めが待っているであろう、この沢に胸を借りるつもりで挑戦してみましょう☆



 ■前日は18:00過ぎには就寝・・実に10時間以上の睡眠を取ったこの日、ガチャ類と行動食&カッパのみの軽装で意気揚々とテンバを出発する。07:00には
  取り付きたいと06:00過ぎには出発、一旦登山道を戻って、前聖ノ滝沢の正面から聖沢に下降するのだが・・・何と下降する沢を間違ってしまった!
  それは前聖ノ滝沢出会いからすぐ上流の両岸切り立った連瀑帯の上に出てしまったのだ。前聖ノ滝沢はこの連瀑の下流に出合っているが、この滝を下る
  ことはまず不可能。 さて困った・・! 今下ってきた沢を登り返すか・・? 辺りをよく観察すると連瀑帯のすぐ手前右岸に、浅いルンゼが有り傾斜も少し
  緩い。 これを登って偵察するが、岩壁に遮られる中よくよく見ると、途中に一本の立ち木がある。これを伝って上部に巻き上がろう・・!後続に登ってきて
  もらう事にした。急斜面を登り返し下流に少しずつ移動、そろそろこの辺りだろうと思う浅い谷に目途をつけ下ろうかとすると縦走路に出てしまった。 そして、
  この谷(浅い尾根と谷を縫いながら下る)を下ろうとした時、 何と!! その下降点は昨日 我々がここだと見当をつけ小さな目印を残していた・・・将にその
  場所だったのである。 何てこった・・・!! 自分達の目を信じなさい・・★ この日、ちょっとした思惑で一本上流の谷を下降してしまったのだが、当初の計画
  通りに谷を下っていれば・・・でも後の祭り。 たっぷり1時間30分以上のロスを出してしまった! しかも朝あんなに晴れていたのに雨がまで降り出してしまった。 



■前聖ノ滝沢出合い・・区切り方にもよるだろうが4段30m位かな。>?          ■これは出合い連瀑帯の更に上の直瀑! 迫力満点!★
   


        ■出合い連瀑帯 3段目の登りにかかるが・・・・
        
    ■この出合い連瀑は1〜2段目は左壁を難なく直登出来る。3段目〜4段目は水流の中を直登る・・ホールドは豊かなので見た目より良い。
      問題はその上・・左に曲がった谷からは吹き出しの滝10m強が架かるのだが、これが悪い。 下降点を間違った事によるロスタイムと、
      にわかに強くなってきた雨で気ばかりが焦る・・!果たしてこの滝を3人ともフリーで登れるのか・?! ザイルを出しながらの登攀では時間も
      かかる・・・さてどうする? 暫く考えた・・10秒?、15秒くらい考えたかな。雨による気力の低下もいやらしいし、こんな時は早く明確な方針を立て
      さっと行動に移ることだ。 で、結局左岸を高巻き。 皆さん張り切って巻きましょう〜★ 少々スリリングなトラバースもありザイルを一回出したが、
      何とか、この連瀑帯の上流の滝二つほどを一緒に巻き谷に戻る・・・ ひとまず安心、先を急ぎましょう♪



     ■谷に戻ってすぐ出た滝は、気合一発! 綾吉さん正面からシャワークライム・・★  大高巻きの鬱憤を晴らすが如く果敢に攀じりましたね♪
 

 ■続いて綺麗な斜滝
 
 



        ■斜滝は右岸の水際を直登!軽快だ・・・ この頃から雨は上がり時折晴れ間も出てきた!  俄然気をよくして滝に取り付く綾吉さん♪
 



■さぁ、尚も連瀑帯は続く! 手前の方から一つずつやっつけ仕事だ! 6m強の滝の右壁から落ち口に登る天唐さん!強引に突破!
 

 ■上部はトユ状の小滝が連続!楽しい遡行が続いた。
 




■時折ザイルを伸ばしながら、しかし殆どフリーに近い滝登りが続いた! この山系の特徴的な赤い石・ラジオラリアの滝を登る天唐さん♪赤石岳の名の由来です。
 



  ■連瀑の奥が 下の大滝かな・・ 手前右側の草付きの心地よい斜面を巻く。  この時少しだけ晴れ間が覗いたので爽やかな高巻きになりました♪   
  

  



       ■草付きの草原のような高台からは遠くの峰々が展望できた! ちょっとここでゆっくり寛ぎたくなるような・・・そんな明るい斜面でした。
       
      



■更に連瀑帯は続く! 思い思いの登り方で水と戯れる楽しい時間が過ぎた!    ■トユ滝を登る綾吉さん♪
  

   ■天唐さんヌメル滝を慎重にクリア
   




■傾斜の強い・・直瀑に近い斜滝もホールドが豊富でシャワーで抜ける!      ■頭から水流に突っ込みましょう★
 

 ■下の大滝を越えると明るいお花畑のような斜面に出る。
 



     ■気持ちの良い谷を暫く登ると、目の前に 前聖ノ滝沢名物 ”上の大滝”が見えてきた! 綺麗だ☆
     


   

■一段目を直登する天唐さん!美しい白糸状の滝!


■この上の大滝は二股の滝が下で合わさっ2条滝だった。
本流は高い左股の方だ。 落差は60mくらいだろうか。
ここまで遡行して来た者にしか見れない絶景!!取り付きの
連瀑帯を越えてきたご褒美のような滝姿だった。 
この界隈に来るからには是非この滝を拝んでもらいたい・♪
そんな見とれるような風景。 長年、日本登山大系の表紙
写真に見入っていた滝が、まさにこの滝だった!
ここまで来れただけで感謝かな♪



      ■前聖ノ滝沢・ 上の大滝で記念写真・・◎ 
      




■上の大滝の上部は源流域の雰囲気になる。背後の山々が綺麗に見渡せる中 源流遡行は続く。 そして滝はいつまでも続いた。
  

  ■源流かつかつまで続く滝を一つずつ片付けて行く
  



■この日は晴れたりガスッたり・・^^;ここまで来てまた濃いガスが出てきた! ■源流域の小滝とは言え中々ムーブの難しいのも出てくる♪ボルダー楽しみましょう♪
  



■水もいよいよ涸れ気味になり・・・やがてガレた涸れ沢になった!          ■この写真の中央に雷鳥が2羽いるの見えますか♪?
  



■さあ、稜線に向かって最後のひとあえぎだ!ハイ松帯に入り込まぬように。     ■聖岳主稜線に脱出! お疲れ様でした〜!
  



●● 聖岳 (3013m) 山頂!●● 元気な綾吉さんに天唐渓遊さん !



■いやいや一時はどうなることかと思った今回の取り掛かりでしたが、
 終わってみれば、何とも爽快な沢登りでした!本邦最南端の3000m峰に
 潔く突き上げる 前聖ノ滝沢は 南斜面に開かれた、とても開放的な良い沢
 でした!登るにも、巻くにもスリリングな取り付き連瀑帯、中間地点の狭まった
 トユ状の連瀑、次第に両岸が開放的になる頃に出現する、美しき大滝!!
 そして豊かなお花畑・・・ そのどれをとっても心に深く残る沢でした!
 何故かとても惹かれる「南ア」の森林と渓谷・・・はやり僕はここが好きなの
 かもしれませんね♪ 残念ながら山頂に達する頃にはガスから雨も降り出して
 アルプスの大展望は望めませんでしたが、登山客の極めて少ないこの地域に
 居れば展望も要らないかな♪ 
 とにもかくにも、全員無事に山頂まで辿り着けた事、頼もしい仲間達に感謝・・!
 我々にとってはとても一生懸命になれる沢でした!
 そして、聖沢、聖岳・・・ここにおられる全ての神々に感謝するのでした☆

 聖岳よ、素晴らしい感動をありがとう!  また来るよ〜南アルプス〜=★

 
See you again ♪
 



■小聖岳ピーク                         ■ヘリポートもある聖平                     ■とても綺麗な聖平小屋でした。

     ■この日はベースキャンプに戻り、お互いの健闘を称え祝杯をあげた!タープの下に潜り込んだ時には大粒の雨が降り出したが、
       これしきの雨なら全然大丈夫! ビールに焼酎、梅酒もあるよ〜♪ 明日は下山するのみだからゆっくりと語り明かしましょう♪・・と
       思ったが、結構この日も早く寝てしまいました・・・^^; 心地よい満足感に満たされ、タープを打つ雨音を聞きながら またいつものように
       眠りにつくのでした。


        翌日下山すると丁度 東海フォレストのバスが ドンピシャリのタイミングで通りかかった!ラッキー♪ 1時間の林道歩きを免れました♪
                      
        とても綺麗なサワラ島ロッジでバスを待っていると、一昨日の出発点でご一緒だった「大宰府出身」の沢屋さんご一行に会った!
            お互いの遡行話に盛り上がる。彼らは赤石沢を登り、途中 沢中で一泊、翌日百闢エを詰めて、赤石岳をぐるりと縦走しサワラ島に
            戻ってきたようだ。 お疲れ様でした♪







      ●● 前聖ノ滝沢 ・ 聖岳界隈で出逢った花達 ●●




●チシマギキョウ                       ●ハクサンフウロ                       ●トウヤクリンドウ




●ヨツバシオガマ                       ●ウサギギク                         ●ミヤマアケボノソウ



●コウメバチソウ                       ●ジャコウソウ                         ●セキヤノアキノチョウジ











■時  期  :  2007年9月14日〜 17日
■地  図  :  赤 石 岳
■メンバー :  天唐渓遊、 綾吉、 沢グルメ








                                               




































inserted by FC2 system