(2008年9月12日〜14日)
■2008年9月・・陰暦の『旧盆』の時期は比較的天候が安定していると信じている・が台風銀座の近辺、九州地方では二百十日が近いだけにこの限りにあらず。
そして今年の旧盆は9月14日・・・本州遠征にはうってつけの連休中日、今年も魅惑の沢へのチャンス到来!
昨年、南アルプス南部 椹島からのアプローチで出会った 「山岳ガイド田中良一さん」とは・・その後も街で山で大変お世話になっている。その田中さんとの
出合いの場で 聞いた一言の言葉がずっと胸に引っかかっていた・・それは 「赤石の北沢は良い沢ですよ。」 と、この一言。どちらかと言うとわがままで天邪鬼な
私でもあるのだが、言葉少なに語られたこの「北沢」のイメージが増大していった。 地形図を見ても何だかゾクゾクする等高線に毛虫マークと滝マーク・・!
赤石岳の南から ダイレクトに突き上げる潔さも良い。なんたって遡行記録が極めて少なく、情報が殆んど無いのが嬉しい。日本登山大系にある遡行図くらいだ。
更に九州からの 「お上りさん遡行者」にとっては沢詰めの源頭部が森林限界を超え、お花畑のカール状になっていそうな地形こそが願ってもない沢の条件だ。
さて、今回の布陣は寸前で参加断念せざるを得なかった残念なメンバーもあったが、昨年同様 天唐渓遊さんと 綾吉さんと私の3名、博多から遠路遥々13時間
の長距離ドライブで畑薙ダムに到着!そのままシート倒して仮眠・・・ 朝一番の東海フォレスト送迎バスに乗りましょうかね。
■牛首峠入渓点から遠く赤石岳が見える!高いね〜☆ しばらくは左岸につけられた道を歩いて吊橋を渡る。 入渓後はさっそく淵の泳ぎに入る天唐さん。
■厳しいルールのある東海フォレストバスは 事前によくそのシステムを知っておいた方が良い。第一畑薙ダムからバスに揺られる事、一時間弱で椹島手前の
牛首峠に到着!ここから遡行開始だ。 ここの所の少雨で水量は少ない・・・昨年同時期よりもかなり少な目だった。赤石沢本流左岸に付けられた作業動のような道を
歩いて入渓〜・ 椹島付近の標高が≒1100m、赤石岳山頂の3120mで、標高差2000mを一気に駆け上がる!
さぁ、これからの2〜3日は赤石岳山懐にどっぷりと浸りましょう!
■ココ最近の少雨で水量はかなり少ない。お陰で楽に遡行出来ました♪ 岩をヘツル天唐さん。 ■ニエ淵は右岸のトラロープ伝いに直上巻いて越えた。
■赤石沢本流には我々の他に名古屋からの沢屋さん達が1パーティーおられた。話を聞くと、百間洞へ向う本流遡行予定、北沢出合い付近で
ビバーク予定との事。と言う事は北沢に侵入した後は我々だけの世界が待っている!お天気は上々〜今日は北沢に侵入してある程度までの
遡行行動予定!しっかりゆっくり赤石沢を味わいましょう♪
■水量は少なめかもしれないが、やはり大渓谷・・・の風格がアチコチに漂う。 泳いでよじ登って難所を越える。
■ここも左岸を登って 残置スリングで下降。
■神の淵ゴルジュ・・・その昔は物凄い水量だったと思うが、今はちょっと泳いで取り付ける。先人の苦労が偲ばれるね=・・それにしても綺麗なゴルジュだ◎
■天唐さん、綾吉さんも泳ぎ一発で滝の左壁に取り付く。
■明るい谷には淵に 滝に ゴルジュにと 遡行を飽きさせない要素が詰まる。 ■滝の左岸と登攀する綾吉さん。
■ここでも大岩の乗っ越しに苦労する事がある
■突然現れる取水堰堤
■虹の淵を越えた辺りから 水量が著しく減じて 単調なゴーロ歩きになった。
ここもその昔 取水堰堤が出来る前は ややこしかったのであろう。 今は堰堤の
おかげで そこそこ雨が降ったとしても堰堤から下流はあまり大きな出水は無らしい。
明るいゴーロで一休みしながら進むと 目の前に立派な堰堤が出現。
ここは、写真のように左岸の固定ラダーを登って 左岸コンクリート沿いを最後まで
進むと ロープが残置してあるので 水に濡れないまま 堰堤プールを越えられる。
名古屋の沢屋さんチームはココで 晩餐の岩魚を釣っておられた。見事な尺岩魚を
仕留めて 今夜は豪勢な夕餉になるだろう♪ またどこかでお会いしましょう・・と
名古屋チームとはココで別れた。
■取水堰堤のプールを越えて150〜200m程で 北沢が出合う。 進入直後の渓相。 しばらく遡行してテンカラ竿を振る。 ●真打、テンカラ師・天唐渓遊さん!●
■とても開放的で爽やかな渓谷だ。
■青い空に赤い石、ラジオラリアが光る!爽やかな渓だ◎
■北沢に進路をとって暫くでちょっとテンカラ竿を振ってみる
事にした。何たって今回は出来る限りの軽量化を目指したので
食料もとても少な目。その代わり赤石の天然イワナをほんの
少し頂こうと言う手筈だ。竿の準備をしてる我らを横目に
いぶかしそうな目で見る綾吉っちゃん
「本当に釣れるんでしょうねぇ〜?」とでも言いたげだが・
ちょっと待った。 あの〜アンタたち俺の名前知ってる?
幻の源流テンカラ師 サ・ワ・グ・ル・メだよ♂
冗談じゃないよ♂
と威勢は良かったが・振っても振っても全然釣れません・・で、
結局「ボウズ」;食料を極力減らしたが、ワサビとショウガと
醤油は持ってきたのだけど、無駄になりました♪だってこの沢、
イワナが居なかったんだもん。
綾吉っちゃん、笑って笑って〜はははははぁ〜・・;
■薪もふんだんにあるよいテン場。
■遡行する事暫くで 右岸に狭いながらもそこそこのテン場発見!
時間は14:30過ぎ≒6時間の遡行だったが今日はこの辺りで手を打とう。
近くには流木も沢山あるし薪には困らないようだ。早速 焚火の薪集めに
汗を流して寝床を作りましょう!例の如くフライも上手く張れた所で乾杯!
染み渡るひと時の始まり。さて、何食べようか・・塩でも舐めて飲るか♪
ザックをあさると非常用のジフィーズパスタが1袋と、行きがけの
高速パーキングで買った燻製ソーセージが一袋・・これににんにく一欠片
入れて出来上がり!3人では量が少ないかと思ったが中々満足。
なんたってこの場所が素晴しい。上流には爽やかに二条の滝が水を落し、
下流には白蓬の頭が聳える・・・このロケーションこそが最大のご馳走だ。
■奥には美しい滝、下流の空には白蓬の頭が見える。
■辺りが薄暗くなりそろそろ焚き火の出番。集めた薪に火を点けると、
何の苦も無く燃え盛ってくれた。ひとしきり火を囲んで楽しい時間が
過ぎて行く。しかし昨夜の睡眠時間は3時間そこそこの上に長時間
ドライブでかなりのお疲れ・・19:00にはウトウト・・焚き火の
温かさを感じながらいつしか眠りに落ちた。
■深夜ふと目が覚めて時計を見ると23:00過ぎ。焚き火は見た目は薄黒く
燻っているが風を受けると内部は赤く煮えていた。ゴソゴソと起き出して
余った薪をくべると、一呼吸おいてパッと明るく火が点いた。
天ちゃんは独りで飲んでたし 綾吉も起き出してる。濡れた服を乾かしたり、
焚き火でお湯を沸かしてコーヒーを淹れたり、座り心地の良い石の上に腰を
おろして火を見つめたり、またせわしなく焚き火の世話をしたりと、
周りは言葉は無くとも明るい連帯感が漂う。とても満ち足りた瞬間。
頭上にはカシオペアが眩しく光っていて、下流の空には白蓬の頭から
派生した稜線が月光にくっきりと浮かび上がった。
「この感覚どう表現したら良いか解らない。」綾吉っちゃんが言った・・・
沢屋になりおって。皆な同じさ。沢の宵、焚き火の魔力に憑かれた夜だ。
■程なくして皆な寝たようだ。最後の薪をくべ、焚き火を背にして具合の良い石に座ると、かすかに温かさが届く。対岸には命からがら辿り着いた
自分の影が 次第に小さく揺れている。ふと角度が変わった影に振り返ると青白い満月だった。 何かが落ちて、何かが充填(みた)されて行く。
今宵は最高の一晩になったなぁ〜・・さてもう十分だ、寝るとしよう。 カシオペア座がかなり上流の方へ動いていた。 皆な おやすみなさい。
<<2日目朝・ 晴れ時々曇り>>
■さて2日目北沢の遡行開始! 美しい2段・二条滝を越える。 ■一段目は滝の右側スラブを登る。
■2段目の滝は直登困難。左手のスラブを登攀。ハーケン 2本 & カム1set
で≒25m程 上部の立ち木にピッチを切る。
■さて、ここから第一次連瀑帯の始まり! まずはスダレ状スラブ滝。 ■4段続きの滝・・これらは登れる。 ■曲がりの三段滝 上部は直登不能
■手掛り豊富なスラブは全て直登できる。 ■赤石岳の由来は この赤い石・・ラジオラリアだ。濡れていると赤く輝く☆
■2段目の直瀑は左壁を巻く。 ■チョークストーン滝はどこからでも自由。 ■白い岩を滑る小滝の連続区間。
■見事な2段(?) 滝!手が出ないので左岸を巻くが、悪い。 ■続く直瀑も直登不可能。右岸スラブを微妙にヘツリ、傾斜が緩んで直上。綾吉さんへつる。
■お見事!見た目は2段だがその上に2段続くゴルジュ滝!1段目が≒40mかな。 ■左岸の岩稜地帯を巻くがこれが厳しい!9mづつ4ピッチ伸ばして左ルンゼを詰める。
■各ピッチ確保が必要な登攀だ。
■ルンゼを詰めあがって大高巻き終了。後は次第に高度を下げる。
■ラジオラリアの美しいスラブ滝・・巻き道から。 ■続く直瀑は滝の右岸壁が登れそうだ。
■下部は簡単、中間から上に ハーケン 2本で直登! 青空に登り上がる感じだ!
■ハーケン回収が上手くなった綾吉っちゃん。今回は乱打したが回収率100%だった!素敵★ ■天唐さんスイスイ登って来た。
■肩がらみのバックアップに タイブロックを使用した。セットが手早くて安心便利。
活用範囲が広がるギアだ。
■その上にまた滝・・ここも左岸を巻きあがりいくつかの滝を同時に巻く。 ■浮石に気をつけてよじ登る。
■これまた顕著なゴルジュ滝! これの処理には手間取った・・・^^;
■左岸の登り出しは良かったが、だんだん悪くなり・・傾斜も急で浮石がいやらしい・・3ピッチ登った辺りにビレイ点が乏しい・・頭上2mのタケカンバの木まで登れば何とかなるが!
■厳しい遡行から開放されるとそこには・・・ 桃源郷が広がっていた。 天国の詰めだ。
■今年の少雨を象徴するが如く 雪渓が多く残っている。 しかし美しい。
■風景に酔いしれ、自然と一体となりお花畑の源頭域をひたすら高く高く・・・ 時間も気にはなるが、ここはじっくり最後の詰め・・、『ウイニング・ラン』を愉しもう!
■振り返ると白蓬の頭が 低く見えてきた。もう我らの方が高みに居るのか?! ■佇む天ちゃん・・・味わい深い源頭だね。
■お花畑がいっそう華やかになったころ 北沢カールの登山道に近づいた。ほど無くしてカール上部の一般登山道に合流。 ここまで10時間以上の遡行時間だった。
■さて、疲れた身体に鞭打って、山頂までの強行軍!ひたすら登山道を登って稜線に出ると、長野県側は晴れていた。月明かりの中、ヘッドライトを付けて主稜線を山頂へと
歩く、歩く。。 十五夜かな・!? 綺麗なお月さまが迎えてくれて 赤石岳山頂に到着! 時間はジャスト 19:00! 実に12時間行動の一日でした。
■皆さん今日は本当にお疲れ様でした! 見事、赤石岳山頂に到着出来ました。
写真には写らなかったけど、月明かりの中うっすらと続く赤石主稜線は見事だった。
今回は初日の赤石沢の大渓谷に浸って、清流と星と焚き火の素敵な宵を過ごせたし、
厳しい遡行、悪い高巻きを越えた先に広がる桃源郷には 本当に身震いするほどの
感動を覚えました。この赤石沢・北沢は 我らにとってはとても厳しい沢でしたが
今まで蓄えてきた つたない経験と、わずかばかりの知識と、判断力・・その全てを
フルに駆使してここまで来れたのだと思います。
沢詰めからの登りは根性の登りでしたが、 気持ちはぜんぜん折ませんでした。
正直、アメ車綾吉っちゃんの馬力には敬服でしたね・・・^^;
天唐さんも言ってましたし。
さて、今日はゆっくり赤石非難小屋で疲れを取りましょう♪
■遅い時間に転がり込んだ 赤石非難小屋だったが、そこでは登山客とか小屋番さんから心温まる歓迎を受けた。 座ると所が無かろう・・と、席をつめてくれる
登山客の皆さん、濡れた服を乾かすのに ハンガーを探してくれたお客さん、レトルトしかないがと 心温まる食事も分けてもらったりと、この日の小屋泊まりは
本当に素晴らしい思い出となりました。 登山客の皆さん、小屋番の榎田さん、本当にお世話になり ありがとうございました。 また来ますよー!
■翌朝 ガスのかかる赤石非難小屋。 ■山屋さんの小屋番さん、ありがとうございました。 ■赤石岳に名残を惜しんで下山しましょう。
■富士山が姿を見せてくれた。 ■秀麗な 荒川三山・・・右がカッコイイ悪沢岳・・今度行こうか★
■片山さんを囲んで愉しい山談義に花が咲く♪
■さて、この日はもう一つ楽しみな出来事が待っている。それはネットで
知り合いになれた静岡踏岳会の片山さんと会えるチャンスがあるのだ。
ぐんぐん下っていると下から一人の登山者が・・お互いに道を譲っていて
「あっ!・・片山さん!?」何と我らを迎えに登ってきてくれたのだ!
ありがとうございます。 その場に座り込んでひとしきり話し込んだ。
南アルプスの事、赤石沢の色んな支谷の事、またもう少し北部の山々の事や
地元の人のみぞ知る踏み分けの事・・時間が経つのを忘れるくらいだった。
その後一緒に下山した我らを車に便乗させてくれるとおっしゃるのだ。
車に便乗!?そう片山さんは山岳連盟の関係者でここの通行許可を
持たれていたのだ。
今回は何から何まで大変お世話になり本当にありがとうございました。
片山さん達がもし九州の山にお見えになる事があれば何でもご協力させて
もらいますよー!この度は本当にお世話になりました!
再開を楽しみにしています! 是非またお会いしましょう!
■美味しかった ヤマブドウ♪
■それにしても今回の南アルプスでは どれもこれも深く思い出に残る素晴らしい渓谷でした。
今年もかけがえの無い素晴らしい恵みと温かい人との出会い・・そして 桃源郷を与えてくれた
南アルプスの峰々、渓谷に感謝!
ありがとう南アルプス! また来るよー♪ 絶対来るよ★
■時 期 : 2008年 9月12日〜 15日
■地 図 : 赤 石 岳
■メンバー : 天唐渓遊、 綾吉、 沢グルメ
●お世話になった方々 : 静岡踏岳会の片山さん 、 「山岳ガイド田中良一さん」
●超お勧め避難小屋 : 赤石避難小屋
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